KARADA TSUSHIN|MOVE FIT TOBATA
今月の特集|FEATURE
「前より歩くのがゆっくりになった」「立ち上がるのに手をつくようになった」——毎日そばで見ているみなさまが、いちばん先に気づく変化です。歩く速さは、脚の力・体のバランス・腰や膝の痛みが重なって表れます。涼しくなって体を動かしやすくなるこの時期に、いちど動きを見直してみませんか。
P2-3
特集:歩く速さは体からのお知らせ
なぜゆっくりになるのか/今日からできる見直し・✂チェック表
P4-5
二つの目で見る、今月の困りごと
理学療法士と鍼灸師の目/自宅で試せること/かんたん体質チェック
P6
ご相談・ご紹介窓口
読者Q&A(歩く速さと鍼灸・運動)/LINEで予約・ご相談
執筆・監修:村田 幸俊(理学療法士・鍼灸師/訪問鍼灸Move 院長・Move fit tobata 代表)|運動も鍼灸も、両方の目で体を診ます
FEATURE
「前より歩くのが遅くなった気がする」「後ろから来た人に追い越されるようになった」——歩く速さの変化は、年齢のせいだけではありません。脚の力、体のバランス、そして腰や膝の痛み。この三つが重なって、歩幅と速さに表れます。
国立長寿医療研究センターの調査では、歩く速さが遅いグループ(男性 秒速1.15m以下・女性 1.12m以下)は、基準となるグループ(男性 1.27〜1.37m・女性 1.23〜1.30m)にくらべて、その後に要介護となる方が多かったと報告されています。歩く速さは、今の体の状態を映す物差しの一つです。
高齢者の日常生活の事故は
「ころぶ」が8割以上
東京消防庁 令和6年:高齢者の日常生活事故による救急搬送98,056人のうち「ころぶ」が73,500人。約4割が入院を要する中等症以上(東京都のデータ)。
痛みや筋力低下 → 歩幅が狭く、遅くなる → 外出が減る → さらに弱る。どこか1つを断ち切るのが、見直しの入り口です
※急に始まった歩きにくさは、様子を見ずに受診を。迷う時は主治医・かかりつけ医にご相談ください。
筋力・バランスなど
多要素な運動を週3日以上
厚労省「身体活動・運動ガイド2023」。高齢者は歩行など1日40分以上に加え、多要素な運動を週3日以上が目安です。
①浅めに座って足を引く ②お辞儀をするように立つ ③ひざを伸ばしてまっすぐ立つ ④支えにつかまって片足を浮かせる——痛みのない範囲で
※痛みが出たら中止。ふらつく方は必ず支えのある場所で行い、通院・リハビリ中の方は主治医・担当者の指示を優先してください。
申し送りに:「歩行がゆっくりになり、立ち上がりに手をつく場面が増えています。転倒の有無と、腰・膝の痛みを確認しています。」
ご家族に:「歩く速さは、脚の力とバランスと痛みが重なって変わります。椅子からの立ち座りを、5回から一緒に。」
SERIES|理学療法士 × 鍼灸師の目で
「最近、歩くのがゆっくりになった」
ジムでも訪問先でも、ご家族やケアマネジャーのみなさまから、よく伺う声です。同じ「歩きにくさ」でも、理学療法士と鍼灸師では、確かめるところが違います。どちらが正しいということではなく、二つの角度から同じ困りごとを見ることで、次にやってみることが見つけやすくなります。
歩く速さが秒速1メートルを下回るかどうかは、専門職が体の状態を見直す一つの目安とされています。くずれているところが見つかれば、そこから立て直していきます。
こうした全身の状態を確認します。状態に合わせて、施術や生活のご提案が変わります。
見るところは違っても、向かう先は同じです。二つの引き出しがあると、歩きにくさに対して打てる手が増えます。
困りごとを整理する
この2つの目で、今の状態を見わたします
安全なセルフケア
ツボ・食の養生を自宅で(→P5)
専門職による確認
続くときは、体の状態を見せてください
次の選択
訪問鍼灸・ジム・様子を見る(→P6)
セルフケアを続けても歩きにくさが続く/だんだん強まる/買い物や通院など生活に支障が出ている——このいずれかにあてはまるときは、無理をせず、医療機関やかかりつけの専門職にご相談ください。
※急に始まった歩きにくさと、救急を呼ぶ目安はP3をご覧ください。
Q.「腎(じん)」とは?
A. 東洋医学でいう「腎」は、腎臓そのものではなく、成長や老化、足腰や骨のはたらきと関わりが深いとされる考え方です。年を重ねると腎の力は少しずつ目減りすると見て、足腰の養生は腎をいたわることから、と考えます。温かい食事と、脚を冷やさないことが身近な養生です。
まずは、どなたでも自宅でできることから。椅子に腰かけて、気持ちよい程度に、息を吐きながらゆっくり押します。
図はおおよその位置。正確な位置は右の説明を
気持ちよい程度に、息を吐きながら5秒ほどゆっくり。強く揉まないこと。ここでの説明は東洋医学の伝統的な考え方の紹介で、症状への効果を保証するものではありません。妊娠中の方(とくに崑崙は避けます)、血が止まりにくい方(抗凝固薬を使う方など)、皮膚に傷や異常がある部位は避け、持病・服薬中の方や症状が続くときは、始める前に主治医・鍼灸師にご相談ください。ツボは薬の代わりではありません。立ったまま押すとふらつくことがあるため、必ず座って行ってください。
東洋医学では、足腰の力は「腎」に支えられると考えます。腎を養うと言われるのは、黒豆・黒ごま・くるみ・山いも・海藻など。あわせて、筋肉のもとになる肉・魚・卵・豆腐を、毎食少しずつ。冷たい飲食にかたよらず、温かい汁物で体を冷やさないように。よく噛んで、腹八分を目安に。※持病や食事の指示がある方は、主治医・管理栄養士の指示を優先してください。
「自分のタイプは?」——スマートフォンで約3分(25問)のかんたん体質チェックができます。今の状態の傾向がわかりますので、結果を体験時に見せていただくと、お話が早く進みます。
※医療上の診断ではなく、ご相談のきっかけです。
歩きにくさが気になる方は「ご本人・ご家族」として、ご利用者様のことでお困りの方は「支援者」として、ご自身の腰や膝のことは「スタッフご本人」として。それぞれの入り口と、初回体験のご案内をP6にまとめました。どの入り口でも、まずは30分の体験からです。
鍼と聞くと身構える方へ。鍼灸には、皮膚に軽く当てたり、さすったりして、鍼を刺さずに用いる「鍉鍼(ていしん)」もあります。棒状の金属の道具で経絡(気血のとおり道)をやさしく整えるもので、鍼を刺す施術が苦手な方や、はじめての方にも用いられます。「鍼はちょっと…」という方も、まずはお気軽にご相談ください。
ご利用者様の「歩き」や「痛み」のことでお困りの方、ご自身の不調が気になる方、どちらもお気軽にご相談ください。理学療法士×鍼灸師が、運動と鍼灸の両方の目で体の状態を確認します。主治医・ケアマネジャーのみなさまと連携しながら進めます。
⑴ ご本人・ご家族の方へ
気になるところがある方は、まず30分の体験で今の状態をご確認ください。
この紙面は、ご家族やお知り合いにそのままお渡しください。
⑵ ケアマネジャー・看護師など支援者の方へ
ご利用者様のご紹介は、医師の同意と、体の状態の確認が必要です。同意書依頼の書類作成は当方で行います。
健康保険でのご利用は医師の同意が前提です(介護保険と併用できます)。
⑶ ケアマネ・看護師・施設スタッフご本人へ
本紙をお持ちのケアマネ・看護師・施設スタッフご本人も無料です。ご自身の腰や膝のことも、30分でご相談いただけます。お仕事の後の時間帯(平日〜20:00)もご相談ください。
Q. 歩くのが遅くなったのは年のせいでしょうか。鍼灸や運動で何か変わりますか?
A. 年齢だけが理由とはかぎりません。脚の力の低下、バランスの取りにくさ、腰や膝の痛み——たいていはこれらが重なって表れます。このうち筋力とバランスは、運動で整えていける部分です(厚労省「身体活動・運動ガイド2023」でも、高齢者には筋力・バランスなど多要素な運動が週3日以上すすめられています)。鍼灸は、東洋医学では腰や膝の痛み、冷えの養生に用いられてきました(効果を保証するものではありません)。まずは体験で、今の状態がどこから来ているのかを確認するところから始めてみてください。
涼しくなって、体を動かしやすい季節になりました。敬老の日を前に、ご家族やご利用者様の歩く様子を、少し立ち止まって眺めてみてください。歩幅がひとつ広がると、行ける場所が増えます。